先日、横浜弁護士会は、会員集会を開催した。会員集会は、総会と違い、議決を目的とするものではなくて、執行部が将来総会の議題としようと考えている問題について、あらかじめ会員の意見を聞いておこうというものだ。
今回のテーマは2つあって、1つは、以前にも紹介した理事者に報酬を支給する有償制の導入について。もう1つは、過去40年にわたって会の意見を二分してきた会名変更の問題だ。
弁護士会(単位会)の名称は、従来、地方裁判所の名称に倣って決められていた。地裁の名前は、各県の県庁所在地の名称から決まるので、神奈川県の弁護士会は横浜弁護士会と称されてきたわけだ。これは他の県も同様で、だから、愛知県の弁護士会は名古屋弁護士会、香川県の弁護士会は高松弁護士会と呼ばれていた。
とはいえ、弁護士会の名称をどうするかについては、特に法律上決まりがあるわけではなく、事実上そうなっていたというだけだ。このため、現在では、ほとんどの弁護士会は、総会で決議をして、会名を県名に合わせるようにしていて、県庁所在地の名称が弁護士会の名称となっているのは、いまは、横浜の他、仙台と金沢しかない。
横浜でも、会名変更を期待する声は根強く、古くは、昭和40年代から議論の対象となっていた。平成に入り、これまで2回、総会で議論されたことがあるが、いずれも会則の改正に必要な3分の2の賛成を得ることはできず、否決された。
会名変更賛成派の立論は明確で、会名を県名に合わせることで、実態にあった会名となり、市民のアクセスも改善するというものだ。特に支部の会員は、これまで、「横浜の弁護士会が、何で横須賀に出てくるんだ」というような質問にさらされ続けてきたとして、会名変更を強く要求している。
他方、会名変更反対の立論は、余り理論的ではなく、過去の会としての歴史を尊重すべきだとか、単純に、神奈川よりも横浜の方が格好いいし、海外では横浜の方が有名だ、というような、割と感情的な反論になっているように思う。
私自身は、天の邪鬼なので、支部に在籍していたときは会名変更に反対をしていたのだが、支部から横浜に事務所を移して10数年が経った今、正直なところ、どちらでもいいのではないか、という気になってきている。やはり、横浜という名称には愛着があるし、格好いいとは思うのだが、確かに「横浜弁護士会小田原相談センター」と言われると、何だろう、と思う人が多いだろう。
以前は、他人の印象を忖度して自分達の名前を変える必要などないだろうと思っていたし、そう公言してきたが、やはり、理事者をやって対外的な交渉にも携わってみると、いちいち「横浜弁護士会は、神奈川県全体の弁護士会です」と説明するのは面倒だし、それでどこまで実態が分かってもらえるのか、分からない。
これも時代の流れというものなのだろう。弁護士が生き残りをかけて仕事を確保せざるを得ない今日、会名を変えて少しでもアクセスが良くなるなら、見栄を張っている場合ではないのだろう。そんな時代の空気を反映してか、会員集会の議論も、以前の総会に比べると、随分トーンダウンしていたような気もする。恐らく、12月の総会で、横浜弁護士会は、神奈川県弁護士会なり、神奈川弁護士会に改名するのではないだろうか。