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 満面の笑みを浮かべ、握手する岸田文雄とバイデン大統領の姿。朝日新聞1月15日付け朝刊トップには、そのツーショットと「防衛強化 バイデン氏支持」の大見出しが躍っている。日本時間の同月14日に行われた日米首脳会談の内容を伝える記事である。

 敵基地攻撃能力や防衛費大幅増をバイデン大統領が「我々は軍事同盟を強化している」と評価すれば、岸田首相は「日米同盟の抑止力、対処力を強めることにつながる」と述べたという。戦後日本の安全保障の大転換が、米国に丸ごと受け容れられ、歓迎されたことを印象付けるものだ。

 一方で、この記事は、中国、北朝鮮、ロシアの行動に触れた共同声明の内容として、それらを批判する次のような一文を紹介している。

 「我々はあらゆる力または抑圧による一方的な現状変更の試みに強く反対する」

 この一文が妙にひっかかった。それは、この発言当事者と記事が本来伝えようとしていることの正当性とは関係ない、表現(あるいは日本語の)にかかわることだ。「一方的な現状変更の試み」というのであれば、まさに岸田政権の前記安全保障の大転換こそ、われわれ日本国民にとっては、同政権による「一方的な現状変更の試み」以外の何物でもないではないか、と思ってしまったのである。

 吉田茂元総理による日米安全保障条約締結、岸信介元総理による安保条約改定、安倍晋三総理による平和安全法制策定に続く、「歴史上最も重要な決定」と自賛する岸田首相の言葉も同紙は別面で伝えている。彼が得たかった「功績」の前に、彼は前記切り捨てているものを一顧だにしていない、という印象を強く持つ。

 「歴史上最も重要な決定」に見合うような国民的な論議は、今もって、この国で行われていない。日本の専守防衛、いわれてきた米日の「矛」「盾」という同盟の役割の転換、予算倍増の是非と財源。国民の議論も理解も棚上げにし、いち早く米国のお墨付きを取り、それを自賛するわが国首相の姿――。

 これはこの「軍事同盟」強化の先にある、憲法9条の歯止めが効かない、米主導の軍事戦略に、いよいよとことん付き合うことになる、これからの日本の姿を象徴しているといわなければならない。

 「狙いは軍需産業振興のために科学技術を動員し、軍事研究の推進に適合する組織な改造することだ」

 この同じ新聞には、岸田政権の閣議決定した安保戦略の戦略で、政府、企業、学術界の連携強化を求めたことに触れ、日本学術会議の組織改革法案に強い危機感を示す「安全保障関連法に反対する学者の会」の声明発表を伝える記事が出ている。

 「民主主義に必要なのは多様性の尊重。ナチスのように社会を同質化させてはならない」(会見での元学術会議会長、広渡清吾・東大名誉教授の発言)

 私たち日本国民の多くは、今、目の前で進行していることを十分に認識しているだろうか。国民の頭越しに作られる日米軍事体制強化と挙国一致への道。それはウクライナ戦争に日本をなぞらえる危機感を前面に、まさに国民の意思を無視した、当然のような顔をした戦争への動員への道であることを。

 ロシアの侵略批判は当然としても、その一方で国のため、「防衛」のために、国民を動員し、命をささげることは「当然」とするような、ウクライナを批判しない、わが国の現実もまた、日本国憲法の立場とは異なる、国民に対する前記動員正当化への刷り込みにみえてくる。

 私たちの平和主義と民主主義は、相当な危機感をもって受けとめなければならにないところに、既に突入しているといわなければならない。



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