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 いわゆる「フェイクニュース」とされるような情報に対する、国民の対応について指南する記事が、総務省のホームページに掲載されている(「上手にネットと付き合おう!」特集ページ「ネットの時代におけるデマやフェイクニュース等の不確かな情報」)。総務省の視点は、要するにネット上に真偽が疑わしい情報が流されているのでうのみにせず、正確性が判断できない場合、投稿・拡散しないことを呼びかけるものだ。

 そして、その真偽の確認方法として、以下の4つを挙げている。

 ① ネット検索し、複数の情報を読み比べる。本や新聞など、ネット以外でも調べる。

 ② 発信元が明らかであっても、信頼できる人なのか、信頼できるWebサイトなのかを確認する。

 ③ 元の情報が古いものだった場合、現在とは状況が 異なるかもしれないので、注意する。

 ④ その情報が引用や伝聞だった場合は、元になった オリジナルの情報源を探して確かる。

 ここに列挙されている方法自体は、間違っていない。そして、何より情報に対して、できるだけ自分の力で確認すべき、ということも重要である。しかし、今、国民にとって、容易に有効なものになるか、といえば、残念ながら、そうはいえない。なぜならば、今の日本の状況は、私たちがある意味、フェアにそれらの情報を疑う途も閉ざされてきているように思えるからだ。

 例えば、前記も総務省の確認方法にある、本や新聞など複数の情報を読み比べるとあるが、新聞から流される情報の偏向を私たちは疑わなければならない局面もある。私たちの判断について必要なものは、公正な賛否両論である。いうまでもなく、一方の意見を強調したり、さらに本来、情報量として差をつけるだけでもフェアではない。

 賛否両論をみなければ、本質的にどちらが正しいとか、支持できるかといった判断ができるわけもない。なぜ、あえてこのことを書くかと言えば、メディアの情報の出し方が誘導的で、国民にフェアな判断機会を第一に考えているとは思えないものに出会うからだ。

 多数派、主流派の意見だけを強調するというのも、本質的に問題がある。少数派、反主流派の識者の意見が間違っているとは限らないこともさることながら、そもそも「多数派、主流派」というだけで、読者、視聴者がそれに引きずられ、思考停止する、つまりは前記されているような自身での確認をしないで、それこそうのみにする危険もあるからだ。

 そのことを回避するために、というか、そのことに配慮するのであれば、メディアは、そこは公正に国民にとっての判断材料をフェアに提供してしかるべきなのだ。ところが、メディアの姿勢は、どうもそういうものではない。ある意味、公正に国民に投げかけるよりも、あらかじめ情報を彼らの視点で取捨し、彼らの考える、提供にふさわしい情報だけを優先的に提供する。それを疑うことは許されていないかのように。

 それだけに、冒頭の総務省が取り上げているような「フェイクニュース」が登場している状況には、その真偽以前の不安がある。つまり、「フェイクニュース」認定の理由そのものが、私たちの前にフェアに提示されているのか、それもまた疑わなくてはならないからだ。

 コロナ禍のメディアの対応には、その意味で、露骨なものも感じざるをえなかった。ネット上では、新型コロナウィルスについても、ワクチンについても、その危険性について、さまざまな専門家の意見が示されながら、メディァは、コロナの危険性とワクチンの効果・推進を基調とする報道に徹し、現在にいたるまで、異論に対してフェアな扱いをしていない(「ワクチン接種への傾斜と薬害の教訓 「ワクチン接種慎重論への扱いにみる危うさ」)。

 いわば、たとえ専門家による異論でも、コロナ予防とワクチン推進の足を引っ張るものと、メディアが断定すれば、国民の目に触れさせる必要も、まして判断材料にさせる必要もないという姿勢である。それは、いまやメディァだけでなく、専門家も含めた個人が自由に発信できるプラットホームである、YouTubeにまで及んでいる。発信を当局に削除されないために、視聴者にだけは分かる隠語でつたえなければならない現実は、全体主義国家的な、うすら寒さすら感じる。

 視聴者を惑わす「フェイクニュース」が存在しない、といっているのではない。ただ、ある種の政策的判断や意向が先行し、それを国民が確認したり、選択したりする機会を奪う形で、あらかじめアクセスの機会が保障されなくていいのか、という問題意識である。それを犠牲にする形は、そもそも総務省のいうようなアプローチの有効性にかかわるし、それは「フェイクニュース」に惑わされる社会同様に、私たちが恐れなければいけない社会であるような気がしてならない。



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