司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

■工藤昇
神奈川県の横浜で開業する一地方弁護士が、日々の生活から伝える、司法改革の「肌触り」。
1964年2月21日生まれ。1987年早稲田大法学部卒。1993年検事任官(東京地方検察庁)。1994年 退官。同年弁護士登録(横浜弁護士会)。1999年早稲田大大学院法学研究科修了(公法修士)。2001年木村・林・工藤法律事務所(現・横浜ユーリス事務所)設立。2008年横浜弁護士会副会長。そのほか横浜国立大学非常勤講師、交通行政市民オンブズマン代表などを務める。著書に「科学的交通事故調査」(共著・日本評論社)など。
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 ようやく確定申告が終わった。人にお金を払うために、なんでこんなに苦労をしなければならないのか、毎年、同じ愚痴を繰り返しているものの、なんとか1年間乗り切ったというある種の満足感もあって、割とほっとしてしまう時期だ。  

 昨年は、イソ弁がいなくなり、長年苦楽をともにしたパートナーが郷里に帰って独立するという、我が事務所にとっては激動の1年だった。正直なところ、事務所を維持できるのか、自信をなくすこともあったが、幸い、2名の若手弁護士がパートナーとして加わってくれたため、しばらくはこの体制を維持していくことができそうだ。

 今現在、この事務所は、弁護士5人、事務員3人の小規模事務所だ。申告の準備で集計したところ、年間の共同経費は2000万円プラスアルファ、という感じだった。2年前よりもだいぶ安くなっているのは、イソ弁が独立したことが大きい。これを弁護士5人が分担するのだが、うち1人は高齢で、法廷に行くような仕事は受けていないので、経費も実際は4人で分担している。私がだいたい4割くらいだろうか。

 なるべく経費を1000万円以下に抑えていければいいと思っていたので、悪くない状態だが、この先、売り上げが落ちていけば、余裕もなくなっていくのは目に見えている。

 感覚的には、事務所を営むための最低限の売り上げが、弁護士1人の事務所で2500万円、共同事務所にして1500万円というあたりではないだろうか。それ以下が常態になったときにどうするのか、あまり考えたくない。

 改めて、これからの弁護士は、減っていく売り上げと相談しながら、極力身を寄せ合い、集約化して経費を削っていくか、広告費をつぎ込んででも売り上げを確保していくか、はっきりした方向性を定めていかなければ、生き残りがはかれなくなるのだろうと思う。

 弁護士は、あまり大した設備投資がいらないので、経費の削減はしやすいのだろうが、それでも限度があろう。最後は弁護士個人が生活を切り詰めていくしかない。これは、弁護士が、自分という資産をコストカットしていくということではなかろうか。

 限りない経費削減競争に巻き込まれていく弁護士にいい仕事ができるのか、金にならないような仕事に手を出していくことができるのか、暗澹となるほかない。



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