司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 ニューヨークから戻り、しばらくして兄が日本に永久帰国してきた。そして、今後の民事裁判への対応にについて、本格的に家族で話し合った。色々と議論した結果、この裁判におけるセンター(中心)は、長男である兄が務めることになった。これまで、なんとなくそういう存在がないまま、家族全員で事件に取り組んできたが、今後、父親と同居する兄が中心となることが、ます最善の選択と思われた。

 これまでは、私が、度々、東京から地元へ帰り、事実関係の調査などのために足を運んでいたが、今後は、ある程度のことは、兄にお願いすることにした。また、この裁判においての窓口も兄に一本化することにした。もちろん、家族間での協力体制は、今まで通りやることも確認した。一応家族間での体制も変わったことから、兄が上京した際、S弁護士の事務所へ行き、このことを報告した。

 改めて振り返ると、今回のことでは様々なことあった。2年前、介護ヘルパーの出来心の小銭泥棒から始まり、日々消えていくお金をめぐって、雇用主である社会福祉協議会に幾度もこの件で、相談するも、何の対応もしてもらえず、その間、介護ヘルパーの犯罪はエスカレートしていった。回避できたはずの被害は止められず、結局、私たち家族は、その怠慢と無神経さの犠牲者になった。

 雇用者である社会福祉協議会が、事の重大さに真剣に向き合わないがゆえに、時間だけは過ぎ、私たち家族はやむなく独自に動き出し、警察に相談することにした。はじめのうちは、警察も取り合ってはもらなかったが、警察という組織は、「証拠」がないと動かないことを知り、父親に内緒で、実家に監視カメラを設置を付けた。それから数日もたたないうちに、介護ヘルパーが手慣れた手つきで、金を窃盗する姿をとらえることになる。

 これが動かぬ証拠だと、警察に通報しすぐに逮捕してくれと頼むが、一旦、警察は彼らの方針で犯人を泳がせるという策に出た。犯人の行動を把握するため、直ちに現行犯逮捕はせず、泳がせることにしたのだ。正直、動かぬ映像として、証拠があるのに逮捕しないというのは、私たちが考えてもいない展開だった。

 そして、逮捕。しかし、数百万円の被害に対し、地元メディアの扱いは「15万円の窃盗事件」。結局、私たちの予想もしない形で、刑事裁判では、最後までこの事件は「15万円窃盗」の扱いに終わる。一方、社会福祉協議会は、事件発覚後も、我々に背を向けるともに、事件が起きた責任、我々の声に耳を貸していれば、犯罪を抑止できた可能性を認めず、ひたすら露骨な隠ぺい姿勢を取り、さらにはわれわれに対する圧力ととれるようなものまで現れた。

 刑事裁判は、懲役1年6か月 執行猶予3年の判決であっけなく終わり、その過程で私たちは、民事裁判という新たな闘いの場と、その相手として、社会福祉協議会をはっきりと射程にいれなければならないことを知る。その間の相手側女性弁護士の対応に困惑しながら、また、私たちも共に闘ってくれる弁護士を探さなければならなくなる。地元の行政との癒着関係をにおわせる空気のなかで、こうした訴訟を闘ってくれる弁護士に、市民がたどりつくための苦労も知った。

 そして、その民事裁判の争点整理手付きでは、私たち被害者家族は、これまた予想もしないような形で、蚊帳の外におかれるような疎外感を味わい、そんな中で、頼みにしていたS弁護士の勢いにも、何やら陰りが出てきた。

 この事件を通して、私たちは既にこれまでの間、社会福祉協議会・行政へのはちきれんばかりの不信感にさいなまれ、かつ、その一方で、被害者である私たちがいやおうなく、かかわざるを得くなった司法の現実に悩まされ、翻弄されつづけてきたように感じていた。

 そして、私たちに突き付けられたのは、あまりにも「知らなかった」という現実だった。つまり、司法という世界の現実がどのようなもので、それがおよそこうした降って湧いたような事件さえなければ、生涯かかわらないで済んでいただろう市民が、その世界にかかわることの大変さ。それを思い知らされることで、「知らなかった」自分たちと、否応なく向き合わされる期間だった。

 もっとも今にしてみれば、この状況は、その後も続き、まだ、これは始まりに過ぎなかった。ただ、この時の私たち家族は、既にこれを教訓として、兄を中心に身構える体制をつくった、といっていい。この時、既に兄のなかでも、私たちの中でも、被害者家族を受け入れてくれる何か出来上がったこの国のシステムに期待や依存をすることから、やはり私たち自身が、いわば、自力でチェックし、解決の道をより主体的に選択していかなければ、われわれは救われないのでないかということを、これまでの不信感から学んだ教訓から感づき始めていたと思う。

 「本人訴訟への道」は、まだ、この時、はっきりと私たちの前に見えていたわけではなかったが、それにつながる覚悟のようなものは、既にこの時から芽生え出して、といっていいように思える。

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