案の定、横浜弁護士会は、E-comon(「小規模事業者顧問弁護士紹介制度」)の試行を正式に断念した。先の常議員会では継続審議とされたが、その後、担当委員会である法律相談センター運営委員会が、理事者に白紙撤回の意見書を提出し、もはや試行は不可能ということになったようだ。
この間、ずいぶん連絡や問い合わせをしてきた方もいたようで、弁護士会はすっかり評判を下げた決着となってしまった。
顧問弁護士制度のあり方については、これまでも、疑問の声がなかったわけではない。私自身も、相談事の少ない顧問先については、本当に有り難いと思いつつも、こちらからはあまりメリットを提供できていないなあと思うことがしばしばある。
顧問収入で事務所経営の安定を図るというのは理想だろうが、E-comonが打ち出した方向、顧問料はごく低額にし、ともかく中小企業とのチャンネルを確保して、事件の開拓に結びつけるという方向自体は、ひとつの選択肢として、決して間違ってはいなかったのだろうと思うが、結局、弁護士会の看板でこれをやろうとしたところに無理があったということなのだろう。
この先、毎月5万円の顧問料をもらって、たまに相談を受ける、という往事の顧問弁護士制度を維持していけるのは、ごく一部の事務所に限られ、月数千円で顧問になります、という事務所は増えてくるに違いない。
私も、もともとさほど多くの顧問先を抱えていたわけではないが、不景気のあおりで、既に、少ない顧問先のうち2社が破綻してしまった。かつての顧問先の破産申立をするのは、本当に辛い作業だった。
こういう時勢になると、例え月5000円でもいいから企業と繋がりだけは保っておきたいというのは、実感としてよく分かる。若手の弁護士にしてみれば、5000円でも贅沢、という人もいるかも知れない。もしかしたら、数年後には、あのときに5000円でE-comonを試行しておいた方がまだましだった、ということになってしまうのだろうか。