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 法科大学院の制度改革の具体的な方向性が明らかになってきている。既に伝えられている法学部3年、法科大学院2年の「法曹5年コース」の創設、法科大学院最終学年在学中での司法試験受験「容認」に加え、法科大学院の定員変更を現行の届け出制から認可制にする方向も報じられている(11月10日付け、毎日新聞東京本社版朝刊)。

 

 これらに対しては、業界内から疑問の声が出ている。前二者の制度改革は、司法試験合格や資格取得への「時短化」で、深刻な志願者減という問題の解消に期待するものだが、弁護士資格の経済的価値が決定的に下落しているなかで、時間的負担の軽減だけで、志願者回復にどれだけの効果があるか疑問であることに加え、在学中受験「容認」に至っては、法科大学院教育の理念に反するという批判が、制度擁護派からも出ている。

 

 「時短化」で志願者を回復するという効果そのものが危ういのに、そこに法科大学院教育を経ることへのこだわりをあっさり投げ打って乗っかる方向――。修了を司法試験の受験要件にし、5年5回までの司法試験受験回数制限という教育効果の「賞味期限」まで設けて、法科大学院教育の必要性を強調し、「理念は正しい」と強弁してきた側からすれば、同じ制度擁護派から異論が出ることもうなずける(「法科大学院在学中受験『容認』という末期症状」)。

 

 さらに、これに加えて、示されている定員の許可制については、効果への疑問以前に、一体何を目指しているのか、その狙いを計りかねる声が出ている。前記記事や文科省(中教審大学分科会)配布資料によれば、この許可制と同時に、文科省は2020年度から法科大学院の入学総定員の上限を約2300人とし、文科相と法相が定員について協議する仕組みを創設する方向が示されている。

 

 前記記事では、これらの目的について、「法科大学院が自由に定員を増やせないようにする」「定員規模を決める際には、文科相が法曹需要などを的確に判断できるよう法相と協議する」といったことが書かれており、また、資料でも定員の増加を念頭にしていることがうかがわれる。

 

 しかし、今年度の法科大学院入学者数は、既に1621人になっており、大方の業界関係者の見方としてもさらに減る可能性が指摘されており、法科大学院が定員を減らすことはあっても増やすことは考えにくい状況にある。このなかで、2300人の定員維持と増員を念頭に入れた許可制とは、どういう意味があるのかという話である。

 

 これについては、実は、増員ではなく減員が念頭、つまり、これ以上減らさせないためではないか、という見方も出ている。志願者の確保という、他の制度改革の目的からすれば、そう考えるのが自然ともいえる。そもそも2300人という数字も、法科大学院制度維持最低死守ラインとされている司法試験合格者1500人から逆算されている(修了率85%、累積合格率70%を想定)とみることができる(「法曹養成制度改革課題〈1500人の実現へ向けて〉のイメージ概要」)。

 

 しかし、この定員に関する改革案には、一見して肝心な実現への中身がない。枠組みを提示しただけで、前記したような法科大学院の現状にあって、どうやったらば志願者を獲得できるのかという点が全く欠落しているのだ。もとより、いうまでもなく枠組みをつくれば志願者が集まるわけでもない。根本的に解決しなければならない原因に目を向けなければ、制度改革の効果が期待できるわけがない。前記「時短化」が将来を見据えた志願者減の根本的な解決にはならなくとも、まだ、志望者に一定の注目を集める可能性があるのに比べ、この方針には、その全く効果が見通せないのである。

 

 前記中教審大学分科会配布資料には、2300人定員、文科相・法相との定員協議、定員認可制の方針について、「法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を高め、法曹養成制度の信頼性・安定性を確保するため」と括るタイトルが付されている。これもこれらの制度改革の目的に言及しているとみてしまうと、効果との間でつなげにくい内容である。それよりも、「予測可能性」を口にする制度を構築する側が、一体、何を予測できているのかを問いたくなる。

 

 現在、見えてきた法科大学院制度改革の方向から一番伝わってくることは、「改革」がもたらした志願者減の本当の原因から目をそらし、いかにそこに触れずに、制度維持をなんとか実現したいと考える側の、効果が期待できない、強い思いばかりである。



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