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 弁護士任官の推進は、司法制度改革審議会の意見書でも、裁判官制度改革の大きな柱の一つとして取り上げられていたように思うが、現状を見る限り、推進どころか、停滞しつつあると言わざるを得まい。当初、日弁連は、年間10人程度の常勤裁判官への任官者を想定していたようだが、これは減り続ける一方で、2010年には1人だけという有様だ。

 日弁連もこの現状には危機感を持っているらしく、各地で弁護士任官推進の運動を進めている。横浜でも、今年1月には弁護士任官に関するシンポジウムが開かれた。私も出席したが、参加者も多く、シンポジウムも興味深い内容ではあったものの、では、これで任官者が飛躍的に増えるかとなると、首をかしげざるを得ない。

 横浜弁護士会で、弁護士任官の旗振り役になっているのは、裁判官評価検討・人材育成支援等推進委員会という、舌をかみそうな長い名前の委員会だが、この委員会は、ここ数年、出席委員の確保にも苦労するような状況になっているようだ。要するに、この問題に真剣な関心を抱いている会員があまりいないということなのだろう。

 私自身は、ロマン主義と非難されそうだが、法曹一元こそが、裁判というものの本質に根ざした制度であろうと考えていて、弁護士任官には、それなりの期待を抱いている。また、実際、弁護士任官の裁判官に当たった事件もいくつか経験してきたが、総じて、キャリア裁判官よりも、信頼が置けるという印象を持つことが多かった。

 では、自分が任官するかというと、正直なところ、現状では、二の足を踏まざるを得ない。

 もちろん、事務所の経営や顧問先の扱い、退官後の身の振り方など、現実的なハードルも高いのだが、それ以上に、1人や2人、あるいは10人でも20人でも、その程度任官者が増えたくらいでは、制度の改革には結びつかないという思いが否めないのだ。

 裁判のユーザーに近い側にいる弁護士が母体となって裁判を主宰し、裁判を真に国民に身近なものにしていこう、というのが、法曹一元のスタートラインだ。そのためには、ある程度、いっぺんに、まとまった人数が任官しないと、意味がないのではないか。

 日弁連も、どうせ旗振りをするなら、司法制度改革を推進してこられた重鎮の先生方がまとまって任官するとか、日弁連会長・副会長は必ず任期終了後に任官することにするとか、ドラスティックなことを考えてみてはどうだろうか。



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