司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 
 次女姉夫妻が、父親のお金が頻繁に消える状況を地元警察署に通報した。しかし、警察の態度は予想に反し、窃盗事件とは扱わなかった。一応、話は聞いたといった調子で、なぜか、被害届は受理されなかった。

 しかし、その後も、父親のお金については、消えていく怪奇現象は続いた。姉が貸したお金を含めて、現金数十万円が急速になくなっていったのだ。不信感を募らせた姉は、徹底して部屋中を探したが、やはりお金は出てこない。兄弟で父親のお金を管理しようという話にもなったが、父親は、それは拒んだ。

 こうした事態に、兄弟は改めて社会福祉協議会との協議を持った。これまで協議に臨んでいた次女姉だけでは、状況が分からないと判断し、緊急に東京から長女姉が帰郷し、出席した。なぜ、当時社協との協議を持ったかといえば、日々、世話をしている介護ヘルパーが何らかの事実を知っているのではないか、との気持ちを、徐々に強めていたからでもあった。

結論からいえば、当時の社協の言い分は、父親のボケの可能性、はっきり言えば、「ボケ扱い」の一点ばりだった。「父親に問題がある」として、お金がなくなっていることについて、向き合わずに、その原因をまともに検討する姿勢はみじんもなかった。今、振り返れば、まさに「臭いものにはふたをせよ」の対応だったと思える。 

  まともに聞く耳をもたない社協に業煮やした我々兄弟は、次女に対して、毎朝、父親のいる実家まで行ってもらい、朝、晩、父親にお金はあるかどうか確認することを頼んだ。

 ただ、これを数か月も毎日続けることは困難だった。次女にも家庭があり、生活がある。流石にそういった生活を続けるには、肉体的にも精神的にも負荷がかかりすぎた。

  結局、次女夫妻が再度警察署に行き、なんとかこの状況を打開できないか再度相談し、改めて詳細な状況を説明した。

  「犯人は介護ヘルパーではないか」、初めて警察からそういう言葉が出た。ただ、決定的な証拠はない。証拠がないと捜査は不可能という。被害が届けられると、警察は捜査を開始すると社会は信じられている。

  この話を次女から聞いた時、恐怖苦痛を感じた。私がニューヨークから帰国した際に会った親切な介護ヘルパーの顔が浮かび胸が痛んだ。

  他方で、介護ヘルパーは合法に他人の家に自由に出入りすることが可能だ。高齢者の家なら、その気になれば、何でも手に入手することができる。現金、宝石類、貴重品何でも盗むことも――そんな思いが頭を巡った。

  犯人は、一体だれか?私の面識がある人物なのか?知らない人だろうか?私たち家族は、父親がお世話になっている介護ヘルパーへの感謝の気持ちと、一旦、切り離し、犯罪の可能性について客観的に考えてみた。

  父親の介護ヘルパーリストをもとに、それぞれの人物の特徴、性癖など次女に調べてもらった。兄弟の中で唯一地元にいる次女も仕事を持っているため、介護ヘルパーの仕事現場を見ているわけではないが、出勤前と帰宅途中に実家に立ち寄る。

  父親のお金の保管場所は基本的に父親しか知らない。姉は父親からお金の保管場所を聞き、通勤途中で実家に立ち寄り、その額を確認。帰宅時に立ち寄り金額の変化を確認することで犯人を特定することにした。

  結果、そのヘルパーが来るとお金がなくなることが明らかになった。その記録を持って警察に行ったが、警察はまだ決定的ではないので捜査ができないという。

  被害届とは、「犯罪の被害に遭ったと考える者が、被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出をいう」と一般的に信じられている。しかし、現実の警察は、決定的証拠がないと捜査を開始できない」と言う。ならば、国民は、犯罪に対してどう対応すればいいのか? 犯人を特定し物的証拠を自分で捜査し逮捕のお膳立てをつくらなければ、警察は動かないことになる。

 担当刑事にこの理不尽さを訴えると、彼は、隠しカメラを仕掛けてはどうかということを示唆した。しかし、同時に、あくまで警察からの提案があったようには口外しないように、という趣旨の念も押された。

  社会福祉協議会は行政の外郭団体、社会福祉法人である。警察は、県職員。ハードルが高い、のかもしれない。釈然としないが、逮捕権限は警察にしかない。一般市民がそこまでしなければ、警察は捜査も出来ず逮捕もできないというのであれば、やるしかない。

  ビデオカメラを設置すれば客観的事実はわかるだろうが、家族にも相当の覚悟がいる。まず、窃盗の証拠と引き換えに、父親のプライバシーをすべて覗くことになる。がビデオの中で家族がみたくない姿や考えられない行動が映っていないとも限らない。それでも父親は、私たちの父親であることには変わりない、という極当り前の結論に達するまで、兄弟は苦悩し、涙しながら議論した。

  そう決めると、我々兄弟の行動は早かった。その翌日、次女の夫が、気分転換を口実に父を外に連れ出した。「敵を欺くにはまず見方から」、父には防犯ビデオの件を伏せて、防犯カメラとビデオを設置した。

  数日後、父親が「ここ数日間、何か変な音が聞こえる」とようになった、と言い始めた。隠しカメラの小さな機械音に気付いたのだ。日中はテレビを付けているし、近隣の生活音などで、HDDの小さな音はかき消されるが、夜更けは静かになるため、HDDの音が聞こえたのだ。

  当時、父親は、それを当番・介護ヘルパーに話し、介護ヘルパーと一緒にテレビ台のしたに仕掛けてある業務用HDDを覗いていた。姉が朝出勤前に実家に立ち寄りそれを見て、「こわれたビデオデッキだから変な音がするの。すぐに修理に出すから」と、その場を取り繕った。

  幸い小型カメラは、1.9メートル上から部屋全体を撮影していため、見つからずに済んだが、父親が気付いてしまったので、カメラを外すことになった。設定してわずか数日、重要なことは、決定的瞬間がとれているかどうかだが、映像を次女はとりあえず、おそるおそる見ることにした。



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