司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 3月17日、朝、地元宮崎日日新聞に「介護ヘルパー窃盗の疑いで逮捕」という記事が掲載された。しかし、そこには信じられないことが書かれていた。

 「15万円? うそだろう、なんで15万の事件なんだ?」

 介護ヘルパーの逮捕は、15万円の窃盗によるとなっていた。インターネット上にも、地元新聞と同じ内容で載っていた。15万円窃盗は、2月14日の一件分の犯行。1年10ヶ月にも及んだ事件の実体とは、かけ離れている。どうしても納得がいかなかった。

  「おかしい。何か臭う」。地元の姉から気になる情報が入っていた。逮捕記事掲載日に、町長は、早々に介護を受けている家に謝罪に回ったという。あまりの段取りの良さに、逆に違和感を持った。

  「社会福祉協議会の介護ヘルパー15万窃盗」逮捕の件は、逮捕当日まで、警察と我々被害者家族しか知らないはず、と思っていた。町行政と警察の間で、裏のつながりがあるのではないか、逮捕前に、行政側に何らかの手回しがあったのではないか、そんな風に思わざるを得なかった。町長は、町の社会福祉協議会の会長を兼務し、町の福祉課の課長クラスが、町社協の事務局長をしているという現実もあった。

  逮捕に至るまで、少なく見積もっても数百万円の窃盗が日常化していた事件だといことは刑事も認める所だった。しかし、「15万円窃盗事件」として地元新聞は報道した。事件が歪曲され、報道されたことにも強い違和感を持った。犯人逮捕はうれしいが、事件の歪曲報道には釈然としなかった。

 逮捕後、担当の宮牛刑事(仮名)に電話した。犯人逮捕に対する感謝の意を伝えたのち、「15万円窃盗の疑いで逮捕」という記事について尋ねた。彼ら口は重たかった。

  「金銭に絡む事件に関しては、確実な証拠が必要、つまり、1円でも狂うと証拠不十分になる。だから、確実な合計金額を提出しないと、立件が困難になるんですよ。本当に捜査協力には感謝しますが・・・」

  とても納得できる説明ではなかった。居ても立ってもいられなくなり、早速、短期の里帰りを決めた。帰郷後、その足で所轄の警察署に行き、担当刑事に会い、単刀直入に「15万円で終わりですか」とぶつけた。

  「15万円以外の窃盗も自白はしてるみたいですがね。我々も必死にやっています。被疑者の自宅まで行き、畳も裏返したり、他に金の隠し場所はないかと家宅捜索もじっくりやっています」

 「捜査中」ということだが、報道の情報操作の件は、やはり納得がいかない。だが、会話のなかで、犯人ヘルパーの動機がぼんやり見えてきた。借金、テレクラの男、そしてパチンコ。それが、父の盗まれたお金の流れた先だった。

  話を聞いている最中、私は怒りが込み上げ自然に拳をにぎりしめ、ブルブル震えてた。その後、無言の状態が続く中、宮内刑事の上司にあたる、小太りのビール腹の児宮刑事(仮名)が話しに加わってきた。

  正直、口が重い宮牛刑事に、業を煮やしていた私は、児宮刑事に自分が疑問をぶつけた。彼は、割とすらすらと現在の状況を話してくれた。場数を踏んだベテラン刑事は、被害者の心情を汲み取る話術に長けていた。まるでベテラン営業マンが新規クライアントを確実にくどき落すように、彼は守秘義務や規則を振りかざすのではなく、被害者の視点での会話をしようとしている印象を受けた。

 彼が言わんとするところは、刑事事件に持ち込むためには、検事が納得する証拠を上げる必要があるという警察の苦労話である。検事は現場に指示を出すばかりで現場は大変という話を、愚痴を語ることで、市民の共感を得る手段だが、上の意向は意向として、現場は、犯行現場のビデオ撮影部分以外の立件にも取り組んでいる。と伝えようとしていた。

  「犯人の身辺調査中は継続して行っています。ある程度の外堀は埋めたのですが、検事に証拠が足りないと言われないよう、こちらは作業してるんです」
  「15万円以外にも100万円以上はあるとの自供もあります。今、逃走や証拠隠滅の可能性もあるため、勾留期間を延ばしました。逃がしはせんよ。とにかく、自白はしてますから。ただ、自白しても、本番で、『しりません』と自供を覆されると困るため、十分にこちらも証拠調べしてるんです」

  私は、この時点では、「15万円窃盗事件」が結論でないと納得し、今後の捜査を期待した。余罪については、姉のメモと通帳記録等から4〜500万円は軽く越えると告げ、私はその場を引き上げた。



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