司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 S弁護士辞任後、地元の兄の方では、S弁護士とのやり取りの一部始終を、被害者である、実家の父親に詳細を話していた。父親は目をつむりながら静かに黙って聞いていたが、しばらくして、こう切り出したという。

 

 「もう一度、その弁護人に謝罪し、お願いしたらどうだろうか。」

 

 兄としては、複雑な心境に陥ったのは間違いなかった。兄は父の意見を考慮したうえで、S弁護士には連絡はせず、一度、私に相談してきた。「もう一度謝罪し、お願いすべきだろうか」

 

 私は、返す言葉がなく、黙っていた。そして、しばし考えた。こちらが謝罪して 、S弁護士が再度受けてくれるのであれば、次回裁判の期日も迫っているだけに、こちらとしては助かる。だが、一度「辞任」を告げてきた弁護士が、すぐ復帰するだろうか。現実的には、もはや厳しいのではないか。

 

 そのことを率直に兄に投げかけると、結論は兄も同じ意見だった。

 

 弁護士と依頼者・市民との間が、こんな風にこじれるケースは、よくあるのだろうか。そんな疑問が頭をもたげていた。いかんせん、このような非常事態になることには、予想もしていなかっただけに、怒りよりも、戸惑いの方が強かった。市民がなんとかたどりついた弁護士を失った現実が、ひしひしと感じられてきた。

 

  過去を振り返りながら、冷静に考え、その結果、やはり被害者である父親の意見を尊重することになった。ただ、こちらが誠意を込めて謝罪しても、兄とS弁護士のやり取りからは、S弁護士の意志がもう一度受任してくれるとは、到底思えないことに変わりはなかった。そのため、私と兄は、こうしたケースでは、どのように交渉すべきなのか、お互いにいろいろと調べてみて、その後に、S弁護士と話し合いをすることにした。ことの発端は、地元裁判所への出張の是非だったが、こちらが全面的に折れるしかないだろう。

 

 ただ、一方で私の中に、素朴な疑問が湧き上がってきていた。このケースの場合、支払った分の着手金などはどうなるだろうか。本人の都合により降りた場合、多少の返金はないのか。辞任後から2日くらい経過していたが、その後、S弁護士からは、何の音沙汰もなかった。私たちは、放置された感じがした。連絡がないのは、返金についての質問がいやなのだろうか。全うに仕事を果たせなかった場合は、不利益を与えたということに繋がらないだろうか――。

 

 そう思いながら、心の底で、「所詮、こんなもんなのか」という失望とも、諦めともつかない冷めた思いが広がり始めていた。



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