争点整理に続き、裁判は進められたが、裁判官の態度がガラリと変わったという、姉からの連絡がきた。以前のような横柄な態度での進行でなく、しおらしく、まるで別人のようなに様変わりしたとのことだった。また、書記官から、「NYにすごく強い力のある方が、いらっしゃるようで」と言われたという。兄が話したのが影響したのだろうか。ともかく、裁判所側は、兄の主張を真摯に受け止めてくれたんだと、私は理解した。
一方、法廷外の嫌がらせは、一向におさまる気配はなく、むしろ、こちらの気力を奪いとろうとするかのように、続いていた。ある時、「150万円を慰謝料として受け取ってほしい」と犯人の両親から、代理人通さずに姉に直接連絡がきた。
民事裁判で裁判官の心証をよくするための策だろうと推測したが、ある疑問が湧いてきた。お互い代理人がいるのに、なぜ、通さず直接してきたのだろうか。また、本当に請求額の一部金として、純粋に受け取っていいものなのか。彼らの法廷外の行動から推測しても仕方ないので、この件に関しては、S弁護士に相談してみた。
S弁護士からは、「特に頂いても問題ないですよ」という、あっさりとした回答が返ってきた。早速、姉に連絡し、S弁護士の言葉通り伝えると、姉自身は受けとることにあまり乗る気ではないようだった。わが家によく出入りしていた介護ヘルパーに、裏切られたという現実からか、姉自身としては、犯人の両親らの顔などは、みたくもないというのが本心だった。とはいえ、こちらも無視すれば、それによって、裁判官の心証が悪くなるといけないと思い、姉を説得し、取りあえず先方と会ってくるよう頼んだ。ただ、今までのことを振り返り考えると、なんとなく嫌な予感はしていた。
渋々、姉は犯人側に連絡し、一部金を受け取る日時や場所を決めた。場所に関しては、町で、誰もが分かるわかる地元のある喫茶店に待ち合わせすることにした。日取りが決まると、次に、犯人側は、どうゆうつもりか分からないが、隣町の町会議員のN氏同席すると条件を付けてきた。150万円を受け取るのに、隣町の議員が同席とは、変だとは思ったが、とりあえず了承した。こちらも、地元の姉だけでは不安なので、長女とその夫も同席してもらった。
しかし、当日、待合場所に行き待つが、数時間たっても犯人側の姿は一向に現れなかった。その間、何度、連絡してもつかまらなかった。姉の頭に過ぎったのは、また、騙された、ということだった。姉の心中は、怒り心頭だった。
その夜、再度、犯人の親に連絡し、ようやくつながり、なぜ約束の場所に来なかったのか理由を尋ねると、「代理人から『勝手な行動をするな』と言われた」と言う。なぜ、そのことが分かった時点でこちらに連絡をしないのかと聞くと、逆切れ気味に「このお金は供託する」と言い、電話を切られた、と。反省という態度は、どこにも見当たらなかった。犯人側は一体、何がしたかったのだろうか。ますます、我々の心証を悪くし、怒りだけが残った。
一方で、行政からの嫌がらせは続き、その都度、役所や社協に連絡を私はしていた。最も、われわれを怒らせたのが、父親が楽しみにしていた、町主催のイベント「金婚式」の招待者リストから、私の両親が外されていたことだった。社協の主任に確認の電話を入れると、「母親はアルツハイマーで分からないだろう」という理由で外したという回答だった。なぜ、「そんな勝手なことをするのか、アルツハイマーであろうが、夫婦は夫婦であり、人権もあるだろう」と、強く問い質しても、のらりくらりと、かわすだけだった。これは、ある意味、彼らの「報復」だと、私は感じとった。
裁判外での状況が悪化していくため、故郷に住む両親が、このままでは、次に何をされるか分からないと考えた、私と兄はある相談をした。