司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 〈一人の反対意見もなかった欺罔行為〉

 

 この最高裁判決が内容としても稀代の迷判決であり、到底容認し得ないことは既に別に記した。新潟大西野教授の強烈な批判意見もある。

 

 しかし、そのような実質的不当判決というだけではなく、前記のように、上告理由とはなし得ないものを上告理由として構成し、それを判決に明記し、さも弁護人が真実上告趣意としたかのように装った最高裁の欺瞞的行為は、国民として到底許し得ないことと言わざるを得ない。

 

 前述のとおり、上告理由としてそれに対し判断を示すことは最高裁判例として重い意味を持ち、現に大法廷判決に次ぐ小法廷判決は判で押したように「判例及びその趣旨に徴して明らか」と述べている(最高裁平成23年(あ)第1081号事件平成24年12月6日判決[一小]、平成23年(あ)第960号事件平成24年10月16日判決[三小]等)。

 

 政府が国民に対し嘘をつくことは前掲の図書の標題からも窺い知れるところではあるけれども、正義と人権擁護の最後の拠り所としての最高裁が、こと裁判員制度の維持のためならばこのような禁じ手までも使うのかと思うと慄然とさせられる。この判決の恐ろしさは、そのことだけではなく、この欺罔行為が裁判官15人全員一致、1人の反対意見もなかったということである。それらの裁判官の最も大切すべき良心はどこに吹き飛んでしまったのであろうか。

 

 

 〈裁判員制度の旗振り行為〉

 

 最高裁は、何故に係る国民を欺罔するような手段を用いてまで、裁判員制度全体の合憲判決を導き出そうとしたのであろうか。

 

 最高裁は、前述のとおり司法審の審議の過程で、一般国民が裁判において評決権を有する裁判は合憲性に疑義があるということは大方の裁判官の一致した意見である旨述べていた。しかし、裁判員法成立後は裁判員制度推進側に転換し、現に多数の裁判員裁判が行われるようになった。

 

 このような状況下では、下級審裁判官に一刻も早く裁判員制度は違憲のデパートではないから安心して審理に臨んで欲しいとの配慮が働いたであろうことは十分に考えられる。つまり、上記大法廷判決は、裁判員制度推進のための旗振り行為であったのである。



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