司法ウオッチ<開かれた司法と市民のための言論サイト>

 

 外国人特派員協会が連続して行った、女性閣僚らへの会見で、記者から「在特会」に絡む質問が出されている。9月26日に行われた松島みどり法相への会見で、この組織について、どう見ているのか、プラス面はあると思うかという質問に対して、同法相は大略こう答えた。

 

 「日本の憲法では『結社の自由』が認められている。それに該当するとしたならば、その(組織の)良い点、悪い点の判断材料もありませんし、『結社の自由』があることと、こういう会があることを一応知っているだけので、何ともいいようがない」
 「つまり、どういう活動をしているか、仔細に承知しているわけではないし、どのことについて聞かれているか分からないのでいいようがない」

 

 この発言に対し、仔細な情報を入手したいと思うか、との質問が出たのに対し、彼女は「法務省が所管する会ではない」とした。これに対して、ジャーナリストの江川紹子氏が、同団体の行っているヘイトスピーチは人権問題として法務省の所管ではないか、として問いただしたのに対して、法相は、特定の人種・民族への憎悪、侮蔑などは許されないこと、行法のなかで民事上の不法行為や、名誉棄損、業務妨害罪などの刑事罰の対象になることと、外国人の人権尊重の視点の啓発など、一般論を述べるにとどまった。

 

 驚くべき回答である。これたけ問題になっている「在特会」の活動について、「知らない」、いやおそらくは知っているけど「こたえない」という立場を貫きとおす姿勢である。あえていえば、もし、江川氏の質問に促されるようにこたえた一般論の認識が本当に法相にあるならば、当然、「在特会」について知らないどころか、重大な関心をもってとらえていなければならないはずである。

 

 この前日、9月25日に山谷えり子・国家公安委員長に対して行われた会見でも、外国人記者から「在特会」に関する質問が集中した。在特会幹部との関係について、その人物の会所属に認識を否定するとともに、会そのものについて、「一般論としていろいろな組織についておこたえするのは適切でない」と回答。国連も米国国務省も警察も同会をヘイトクライムの犯罪グループと指摘しているとして、さらにこうした活動についてのコメントを促されると、「『日本は和をもって貴し』とする、ひとりひとりの人権を大切にしてきた国柄」「一部の国や人々に対して、差別的決めつけや侮蔑、憎悪感情を煽るのは憂慮にたえない」「違法行為は警察として厳正対処する」などという、これまた一般論で応じている。

 

 さらに、以前TBSラジオから書面で求められた「在特会」に対する、彼女の認識は、同会のホームページ上の説明のコピーあったことを自身の口で明らかにし、認識のなかで述べられていた、同団体主張の「在日特権」の中身については、こたえられない、こたえない結果となった。

 

 「在特会」の問題については、基本的に「知らない」「こたえる立場にない」で押し通し、ヘイトスピーチそのものについては一般論で応じるという、なにやら彼女たちの間で、申し合わせがあるかのようである。なぜ、彼女たちが、「在特会」自体についてのコメントを避けたがるのか、その理由についての詮索を置いたとしても、この対応は私たちとして看過してよいものだろうか。その詮索以前に、外国人記者を前に、日本の政治トップとして、どういう姿を発信しているのか、そしてそれが許されている日本という国がどのように映るのか、そこを考えなければならない。

 

 問われているのは、いうまでもなく、彼女たちの責任への自覚と、感性の問題であるというべきである。江川氏が指摘した通り、人権侵害が問題になっている団体の行動を「所管外」とする法相、そういう団体に対して犯罪グループという認識を示せない国家公安委員長。その責任感欠如の姿勢は、当然、いくら促されて一般論を繰り出しても、こうした行為に対する根本的な感性が疑われても仕方がない。これは、わが国にとって、本来、深刻な事態というべきだ。

 

 10月1日付け朝日新聞の社説は、「差別と政権 疑念晴らすのはあなた」というタイトルで、この山谷会見を取り上げた。山谷氏に加えて、ネオナチ団体との関係を報じられた高市早苗総務相、稲田朋美・自民党政調会長と、任命責任者である安倍晋三首相が、自身の言葉ではっきりと、「在特会」が煽動する民族差別や「ネオナチ」の考え方を容認しないという決意を示す必要がある、としている。

 

 しかし、今、本当に容認するどうかを一番問われているのは、私たちである。マスコミの報道は、この問題の重大性に比して、決して大きいとはいえない。彼女たちと安倍首相のこの問題に対して、まず私たちが重大な関心をもってとらえ、その内容如何では、はっきりと「容認しない」立場に立てるかどうかの問題である。



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